本当の「分かる」に向かって~くっつきの「を」は何をくっつけてるの?~

先日,1年生で学習する助詞の「を」をテーマにしたインストラクションをしました。夏休みの出来事を絵日記に書いた時,「花火をしました。」の「を」はあいうえおの「お」だったかな?どっちだったかな?と悩んでいる姿があったからです。まず,1年生だけを集めてインストラクションをしました。

私 「おもちゃ“お”かう。」(とホワイトボードに書くと)・・・
子 「先生,ちがうよ!」「いつも,そうやってだまそうとするんだから!」
子 「先生,ここは,くっつきの“を”だよ!」(とっても得意気に。)
私 「じゃ,こっち(おもちゃ)の“お”もくっつきの“を”ってこと?」
子 「そっちは,ちがうー!!」
私 「くっつきの“を”はどんな時に使うの?」
子 「ごはんを食べる。」「おかしを食べる。」「ズボンをはく。」・・・
(くっつきの“を”を使った文を集める。)
私 「くっつきのをは,一体何をくっつけてるのかな~?」
子 「えっと・・・」「こことここ(1画目と2画目)!」「そうそう!!」
(そうだそうだ!!という雰囲気になっていく。) 
私 「あいうえおの“お”だって,1画目と2画目がくっついているよ。」
子 「あれ・・・」

分かっていると思っていても説明しようとなると,実はよく分かっていなかったことに気付かされることがあります。子ども達の「分かった」という言葉を聞くと安心しがちですが,「分かっている」と(分かったつもりになって)満足している状態では,思考が止まってしまい,理解が深まらなくなることがよくあります。一方で,日常で活用できる「生きた知識」は,他者から与えられるものではなく,自分で思考し,獲得していくものです。「分かっていない」を自覚することは「本当の分かる」(生きた知識の獲得)に向かう大事な一歩です。
その後,1年生の「分からない」をきっかけに,トラ組全体でインストラクションをしました。2・3年生の中にも,助詞の「は」や「を」を文章の中で正しく使いこなすことが難しいと感じている人,苦手な人が多くいます。五味太郎さんの絵本『言葉図鑑』を使って言葉の種類について触れながら,たった1文字でもくっつきの「を」や「は」,「が」,「に」などの助詞には,言葉と言葉をくっつける働きがあることを学習しました。(「わたし“は”食べる。」と「わたし“を”食べる。」を動作化してみました。1文字変わるだけで,大変なことになってしまいます。)「言葉と言葉をくっつける時はくっつきの“を”を使う。」と,3年生の分かりやすい説明を真似しながら,1年生も自分の言葉で説明をする練習もしました。
「生きた知識」を獲得するための,思考のきっかけになるインストラクションを心がけています。

 


 

2022年10月06日