ウクライナ侵攻 世界でいまなにが?(のびっこ編)

 のびっこ学級では,ロシアによるウクライナ侵攻について考えています。今年も毎日小学生新聞を活用し,社会・世界で起きている様々な出来事に目を向け,ともに考えていきたいと思います。
常石ともに学園では,毎朝教室のポストに子どもの人数分の小学生新聞が届けられています。1年生や転校してきた子は,はじめはとってもびっくりしていました。まだ新聞に興味を持てない子もいれば,毎朝黙々と読んでいる子や,面白い記事を見つけて「見てこれ!」と教えてくれる子もいて,多様です。のびっこ学級では,昨年度,興味のある記事をスクラップしました。考えたことを付箋に書いて意見を出し合ったり,地図帳で地名を調べたり,教科書で関連のあることを持ち寄ったりして,様々なことを考えてきました。

 


 

 3月には,新聞の記事を読み,地図帳などを使って様々なことを考えました。地図を見た3年生はクリミア半島に山がなく,黒海でさまざまな国とつながっていることから「ロシア軍の基地を作るためにクリミア半島を攻めてきたのでないか」と考えました。また,別の3年生は,黒海が海なのか湖なのか,どんな生き物がいるのか等,大好きな魚を自分とウクライナの共通項として調べました。地図帳の後ろにある表を使って,日本・ロシア・ウクライナの人口や面積などをまとめたり,NATOについて説明する絵を描いたりしました。国名や国旗だけでなく,資料の読み解きなど,社会の教科学習にもつなげることができました。
 1,2年生は「どうして戦争をしたらいけないの?」というところから考え始めました。ある1年生は「道徳でけんかはよくないと考えたから戦争はダメ。もしかしてロシアの学校には道徳という教科がないのかな?それかプーチン大統領が子どものころは戦争が当たり前にあったのかもしれない。」と話しました。戦後の冷戦についての記事を読んで考えたようです。
 2年生は,避難するウクライナの人の写真から「赤ちゃんまで悲しそう。難民支援で食料をもらっているけど,好きなものを食べられるわけじゃない。みんなお母さんのご飯を食べたいと本当は思っているはず。」と話しました。

 

 

 

 年度が変わった4月のことです。4月19日付の毎日小学生新聞に「ウクライナで『平和のてぶくろ』に砲撃」とありました。2017年 日本のアーティスト・ミヤザキケンスケさんが,現地の市民と一緒に平和を願って描いた壁画に,砲弾が撃ち込まれたと報道されていました。壁画は,雪の降る日に手袋の中に身を寄せ合う動物たちを描いたウクライナの民話「てぶくろ」をモチーフに描かれました。「この絵本知ってる!」「保育所で読んだ」と,みんなよく知っているようでした。この絵本が,まさかウクライナの民話だったとは驚きです!ミヤザキさんの現地の友人が,マリウポリの街を脱出する直前に撮影したそうですが,壁の一部が砲弾で崩れています。しかし,よくよく写真を見ると,様々な民族の人たちが入っている手袋の絵の部分には,一発も弾が当たっていません。

 

 記事を読んだ感想を聞くと,1年生は「そんなのかなしい」,4年生「ロシア軍はわざと手袋のところに砲撃しなかったのではないかな」「壊れてしまったけど,手袋の部分が残ってよかった」「壁画の手袋に弾が当たらなかったのが不思議」と考えました。

 

 

 壁画を前にして兵士が手袋の部分を攻撃することが心理的にできなかったのか…,もしくは,『てぶくろ』が持つ平和の力とでもいえるなにか不思議なものが砲弾を避けたのか…真実は分かりません。しかし,子どもたちの心にたしかに何か感じるものがあったようです。
その後,図書室へ行き,『てぶくろ』の絵本を借りてきました。絵本について話していると,2・3年生が「手袋の中のお部屋はきっとこうなっている!」と,想像したことを絵に描き始めました。ミヤザキケンスケさんについて調べ,まとめた子もいました。ミヤザキさんは様々な国や地域で,壁画を残す活動をされているそうです。ネットの文章を写すのではなく,自分の言葉に変換して文章化しようと頑張っている姿が印象的でした。
「何人入っても手袋は破れないし,動物が譲り合って手袋に仲間を入れてあげていたから,平和だと思う」
「手袋は,戦争で人の体や安全を守ってくれるものだと言いたいのだと思う。(壁画は)色んな民族の人が手袋に入っている。だから色んな国の人が仲良くなれるようにするための願いがこめられているもの」
「大雪の日や戦争でも,手袋がみんなを守る。そのためのてぶくろだと思った。」
 
ウクライナとロシアの戦争は,子どもたちにとっては遠い世界のことで,想像することさえとても難しいでしょう。なぜ戦争をしているのかもピンとこないだろうと思います。絵本・壁画など分かりやすい身近な題材から,ウクライナや平和に思いを寄せることができるということを大切にしたいと思います。


2022年05月02日